経済は感情で動く
お金について、人は錯覚を起こす。
給料についての、実質金額と額面金額。
あなたの給料が、30万円だとする。
来年は、31万円になる。
3.3%のアップだ。
しかし、一般的な物価は5%値上がりしている。
給料は、上がったものの、実質金額は減少してしまう。
あなたの給料は、来年も今年と同じ30万円。
しかし、一般的な物価は、5%値下がりしている。
実質金額は、増加と同じだ。
どっちが得した、損したと思うだろうか。
冷静に考えれば、前者は損であるが、なぜか目先の利得である給料が上がった事実が得をしたと判断させる。
客観的数値よりも、比較や正当化、動機づけや提示方法で、判断は大きく左右されてしまう。
自分の給料よりも、他人の給料を気にする人が多いのは、相対的に比較しているからだ。
お金というものは、1,000円は、1,000円であり、それ以上でも、それ以下の価値でもない。
つまり、絶対値である。
しかし、私たちは、感覚器官で感じるように変化や差異で捉えてしまうようになっている。
ノーベル賞受賞の【プロスペクト理論】は語る。
100万円得した喜びよりも、100万円損したショックのほうがはるかに大きい。
この理論の価値関数グラフを見たことがあればグラフは、左右非対称。
1,000円と1,005円の差は、5円。
5円と10円の差も、5円。
同じ5円だが、気になるのは・・・なぜか、後者だ。
このような錯覚に加えて、条件提示が変わったり(前回のフレーミング効果)、確実性効果と言われている、ゼロに近づく際に心を揺さぶられることが、ますます判断を危うくする。
つまり、ビジネスでは、決して顧客に損をしたと思わせてはならない。
得をしたと思うよりも、2倍の心理的ショックを与えた相手に決して好意は持たない。
バイヤーズリモース(購入後の後悔)というものがある。特に、高額商品、高価格帯に発生しやすい。
購入後から、満足度が下がっていくという現象。
ここで、損失が発覚したら・・・。
他店で購入した方が、得であり、損をしたと感じた場合は決して信用を得ることはない。
お金について、人は錯覚を起こすことを忘れてはならない。
更に、無意識で処理されている【心の家計簿】が存在する。
同じ金額を支払う場合でも、心理的痛み(損失感)は異なる。
日常での買い物よりも、旅先では無駄使いが多くなること。
一人での外食よりも、恋人との外食。
飲み会の割り勘代と、本代。
確かに、痛みが違う。
加えて、現金、クレジット、キャッシュレス、ポイント、ローンと、支払方法によっても、痛みが異なる。
目先の利得で錯覚を起こす顧客を、惹きつけるヒントがあるとも言える。
忘れてはならないのは、目先の利得で損失を被ったと感じた場合には、顧客は戻ることがないということ。
大事なことなので、3回お伝えしたい。
お金について、人は錯覚する。