影響力の武器
なぜ私たちは、このような影響力に惑わされてしまうのか?
これは、ビジネス上の禁じ手なのか、有効手段なのか。
本書の最後の章には、このようなサブタイトルがある。
【自動化された時代の原始的な承諾】
どういうことかと言えば、本書が記された1991年には、コンピューター時代の到来が予想されていた。
ますます情報化が進み、加速する社会。
科学分野はじめ、あらゆる分野の専門家がテクノロジーの進化を予見し、時代が大きく変化することを認識していた。だから、自動化された時代と表現されたに違いない。
その中で、原始的な承諾がいかに有効性を持つか。
これが、本書のテーマである。
本書にたびたび用いられた【簡便法】という判断。
利用可能な関連情報をすべて利用するわけではなく、全体を代表する一部の情報だけを用いて、決定を下すプロセス。
自動化された時代には、この方法を一層使うことを余儀なくされていると記している。
その例として、低次の動物が遺伝子的に、機械的に判断し行動する様と同一だと論じている。
私たちの脳のメカニズムは、他の動物よりも効率的であることはこの世界を支配的に生活していることが、証であるにも関わらず、一定条件下における判断は、自動的で原始的な単一の特徴に導かれてしまう。
本書で紹介された6項目の影響力の武器。
- 返報性
- 一貫性
- 社会的証明
- 好意
- 権威
- 希少性
普通は、正しい判断や選択の行う上で用いられているはずのものが【承諾誘導】という目的に代わることで、私たちは損失を被ることとなる。
「良い証拠が一つで十分」であるはずはないことを、認識しなければならない。
安易に、簡便反応をしてはならないと教えてくれている。
ビジネスの現場において、しばしば使われている影響力の武器。
特定業界(特に、インターネット販売)では、既にパターン化されたと言える。
返報性(無料特典など)、自分が選んで正しい判断を下したと認識させる一貫性、自分と同じような判断や行動を表した多数の顧客の声による社会的証明、あなたとの共通項で距離を近づけたり、第一印象を装う表現や行動(お世辞)による好意、専門家としての資格、肩書、装飾品を誠実に見せることで信頼を得るための権威、手に入れられない条件や競争という環境をつくることで演出される希少性。
誰しも何度も経験があるはずである。
しかし、影響されてしまう不可思議。
売り手側の倫理と道徳のみが、コントロールしているとも言える。
影響力の武器が存在することは、認識出来た。
使い方や事例は、身近にあり経験している。
あなたがこの影響力を使うとしよう。
その際に求められることが、本書にたびたび書かれている。
【誠実さ】
あまりに当たり前であり、ビジネスにおいてが顧客満足が基本であるために必要不可欠な要素である。
ここからは、自分なりにまとめた主観として、記述する。
誠実さは、ビジネスの随所に現れる。
あなたのホームページ、文章、画像、デザイン。
コンセプト、ポリシー、ミッション、経営理念等など。
万が一、そこに誠実さがない場合、現代の顧客からは気付かれる。
人間は、本書が書かれた僅か30年間で急激な進歩を遂げた。
情報処理能力も飛躍的に進化し、様々な経験も重ねてきた。
影響力の武器は、今でも有効であることに違いない。
しかし、使いこなすには、誠実さを忘れてはならない。
最後に。
今回、現代マーケッターのバイブルと呼ばれる本書について、このように書き連ねたことは、自分自身の糧となった。
本書を手にして、既に20年以上。
何度も読み返したし、参考にもした。
しかし、このように自分なりにまとめたことはなかった。
このように、マーケティングの古典について書く理由。
最初は、したたかな思惑も抱いていた。
しかし、書いていくうちに、違ってきた。
まずは、自分自身のため。
自分の知識と技術を維持し向上させるためには必要なことに気づいた。
そして、読んでくれるかもしれない、「誰かのため」。
知っていても、使いこなせていない人は多い。
知らなければ、知ることで違う一歩を踏み出すことが出来る。
この記事が、誰かの参考になることを・・・少しだけ期待したい。
次回からは、2006年に刊行されたベストセラー。
経済は感情で動く ~はじめての行動経済学
使いこなせるべく、チャレンジする。